単位のはなし – 「長さ」と「明るさ」

国際単位系(SI単位系)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

今回は単位の話です。「私はデザイナーなので、理系の話なんて関係ない。」と思われるかもしれません。しかし、物理に基づいた計算が現在主流である以上、こういった話題を避けて通ることが難しくなってきています。

前回の記事ではSSSについて触れ、設定値の単位を気にするようにお話ししました。ですが、それでもうまくいかないという質問を受けることがあります。[cm]でモデリングしていて、適切な値を入力しているのにうまくいかないというものです。

なぜでしょう?

この場合、モデルが実寸(Real World Scale)で作られていないことが原因です。Maya等のDCCツールで[cm]を選び、SSSでのRadiusの設定を人の肌を表現するため、数[mm]にしていたとしましょう。もしモデルが実寸で作られていたならば、思うような見た目になります。しかし、実寸で作られておらず、人の大きさが例えば17などになってしまっていたらどうでしょう?当然ながら、思った結果は得られません。

なぜなら、あなたのモデルはミニチュアになっているのです!

特別な理由がない限り、モデルは実寸で制作しましょう。

以上は「長さ」についてでした。

他に多く受ける質問の一つに、Arnoldに移行すると明るさが変わってしまった、というものがあります。例えば、点光源を使っていたとします。今まで使っていたレンダラと同じ値を入力しているのに、Arnoldでは暗くなる、あるいは、明るくなる、というのです。

これはレンダラによって点光源で使用している単位が異なるためです。実際の対処法としては、値にπ(3.14)をかける、またはπで割るというものがありますが、実はこれは単位の変換を行っているのです。明るさの単位について詳しく知りたい人には安藤幸司さんによる良書「光と光の記録」、または同氏によるWebサイトをお勧めします。

このように単位に関する問題は「明るさ」においても発生します。

規模の大きな作品で一部の作業を外注に出す場合など、単位についてしっかり理解しておくことで、多くのトラブルを避けることができます。

最後に、CGを始めたばかりの時によく陥る勘違いについて少し書いておきたいと思います。私自身も昔よく間違えていました。それは「明るさ」と「長さ」が関係する場合です。以下のようなシーンがあり、トーラスが発光体であったとします。

scene
トーラスが発光体であったとします

mesh_light
モデリングは[m]で行っており床のポリゴンのサイズは1x1
モデリングは[m]で行い、床のポリゴンは1 x 1のサイズです。レンダリングをしたら、上のようになりました。さて、ここで同じようなシーンを[cm]でモデリングしなおします。床のポリゴンのサイズは今度は100 x 100になりました。発光体に設定する明るさ(輝度値)は変えずに、先ほどの画像と同じに見えるようカメラの位置と画角を調整して、再びレンダリングします。

明るさは上の画像と比べ明るくなるでしょうか?それとも暗くなるでしょうか?

答えは「変わらない」です。どうしてかを自分でしっかり考えてみると色々なことが分かるようになります。

余談になりますが、色素などはモル[mol]で測ったりします。そのうち[mol]で入力するシェーダ・パラメータが一般的に使われるようになるかもしれませんね。

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